Report:オーストリア・ドイチュヴァグラム音楽学校を訪ねて

2011年4月27日~29日に、オーストリア・ウィーン郊外にあります、ドイチュ・ヴァグラム音楽学校を訪ね、オーストリアの子供たちの合唱との共同舞台製作を行いました。
震災後間もない訪問に対し、私たちの苦悩を察して下さったコミュニティーの方々が、とても暖かく迎えて下さり、日本から持参した鯉のぼりを市長自ら梯子に登り、市庁舎の前のオーストリア国旗の隣りに翻えさせて下さり、日本の子供たちの健康を祈って下さった事は、今でも印象に残ります。

さて、私たちは、日本語ということば、歌を、美しい音楽の調べと共に、その芸術経験の中で、子供たちと‘心の花’について語り合いました。それは、互いに‘人の道’を語り併せる、すばらしい時間となりました。 オーストリア・ドイチュヴァグラムからの報告書 と 子供たちからのアンケートのやりとりをご紹介します。

子供たちの合唱は、当初は小学生を予定しておりましたが、実際には、中高等学生がほとんどの合唱編成となり、そこには成熟した答えもあり、彼らの感性には驚きの連続でした。

 ○ 合唱に参加される生徒の皆様へ

今公演では、「心に眠る花」がテーマとなりますが、
皆さんの心の花が、起き上がる時、現れる時、
それは、どんな時ですか?

私たちは、仮にこんな時に、心の花が現れると解釈しています。
例えば、ショパンが「別れの曲」を作曲し、それを弟子のグッドマンが見事に弾いたのを聞いて、「おう、祖国よ」と叫んだというエピソードを知りますが、
この時、ショパンの心に眠る祖国という花が咲き、現れたと解釈します。

1本の花を美しいと思うとき、心に起きる感情、心の熱…。
いつ会えるともわからない恋人という花…。
子供たちが遊ぶ姿を見て、その無邪気さ、あいらしさに咲く、我が心の花…。
老人に手を添え、その温かなやわらかな肌、その深い皺に敬意を覚える時に現れる花。
病の床にある、母の手をとり、もっと親孝行したかったと溢れる涙に映る花。
我々を育んでくれた故郷、祖国へと咲く花。

皆さんと共に歌う、日本の曲「花の街」の作者は、戦争が終わり、瓦礫となった焼け野原を見て、あたたかなスープ、あたたかな毛布、それ以上に強く夢見たもの、
それが、平和という名の花の街でした。

さて、皆さんは、どんな時に、心の花が咲きますか?

出演者
(^^) 岡崎明義教授(フルーティスト)
(^^) 遠藤尚子(音楽監督、フルーティスト)
(^^) Aya(朗読者)

子供たちからの解答

アンケート回答:ドイチュ・ヴァグラム中高等学校合唱 2011年

-共同での体験、例えばクラス全員でテレビのコンテストに参加していて、ある14歳の女学生が体験して、そのクラスで一番だと感じる時。クラスの皆との強い結束感を感じた時。
-ある女の子は、おばあちゃんと“(小さなグラスでの)1杯のワイン”を飲みながら、ゆったりと過ごし深い思いやりを持ってお喋りをしている時。
-家族みんなで全員揃って、一緒に時間を過ごす時。
-彼と一緒に“アルテ・ドナウ“(ドナウ川本流の遊び場)で足漕ぎボートを乗りに行く時。
-ブドウ畑の丘の私の故郷の村が谷の中に横たわっているのを見ると、自分の故郷に「愛」を感じる。
-広い平野を馬と一緒に走り、そのたてがみが風にたなびく時。
-家族と共にクリスマスクッキーを焼いている時。
-他の人と一緒にオーケストラや合唱で演奏したり歌ったりする時に幸せを感じる。
-お友達と一緒にクリスマス市に行く時。
-何か素敵なものを買って、それが自分に似合っている時。
-良い本を読んだ時。
-素敵なパートナーと美しい音楽に合わせて正しいリズムで踊っている時。
-より大変な難しい課題(仕事)に成功した時。
-私の祖父母が金婚式をお祝いした時、この2人がこんなに長い間幸せに人生を共にした事がとても幸せに感じる時。
-お友達と一緒に工作をする時。例えばアクセサリー等を一緒に作って、2人でそれを身につけつ時。
-誰かと喧嘩をした後で、仲直りをした時。

ご協力者への感謝の辞:
この度の日墺両国の共同芸術舞台制作という交流は、先ずは、両国の懸け橋をつくって下さった、オーストリア・ウィーン在住のフルーティスト・津久井清様並びにご家族様、ドイチェ・ヴァグラム市長:Herr Buergermeister Friedrich Quirgust、現場で子供たちの合唱指導をはじめ多くの事にご努力下さったLtg.Mag.Ulrike Gaerber、Herr Kulturstadtrat Mag.Franz Spehn、Ltg.Gernot Cernajsek、Mag. Eva Steinhauser 他

また、日本から、今回の公演の主旨にご理解を下りご出演をご承諾下さった尚美音楽大学・岡崎明義教授、フルートの生徒さん、そして友人たち・・・そして、鯉のぼりを持参下さり、被災地に持ち帰って下さった中津和幸さん、多くのご協力者あっての芸術交流の成就であり、皆々様に心より感謝申し上げます。

ダンケ・シェン!

NPO The Blest Council 代表/朗読者 Aya
理事/音楽監督 遠藤尚子

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